後遺障害の解説

脊髄損傷の後遺障害

脊髄損傷の後遺障害等級

脊髄損傷の後遺障害等級は、神経系統の障害に分類され、具体的には麻痺の範囲・程度等により判断します。
脊髄損傷の後遺障害 自賠責保険金
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」

<麻痺の範囲・程度>
・高度の四肢麻痺
・高度の対麻痺
・中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

<参考例>
第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の高度の対麻痺、神経因性膀胱障害および脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、脊柱の変形等が認められるもの
4000万円  
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時他人の介護を要するもの」

<麻痺の範囲・程度>
・中等度の四肢麻痺が認められるもの
・軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

<参考例>
第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の中等度の対麻痺が生じたために、立位の保持に杖又は硬性装具を要するとともに、軽度の神経因性膀胱障害および脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、脊柱の変形が認められるもの
3000万円  
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

「生命の維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが、高度の失調または平衡機能障害のために終身労務につくことができないもの」

<麻痺の範囲・程度>
・軽度の四肢麻痺が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの
2219万円  
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

「せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの」

<麻痺の程度・範囲>
・軽度の対麻痺
・一下肢の高度の単麻痺
1574万円  
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

「せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの」

<麻痺の範囲・程度>
・一下肢の中等度の単麻痺

<参考例>
第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の中等度の単麻痺が生じたために、杖又は硬性装具なしには階段をのぼることができないとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの
1051万円  
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されているもの

「通常の労務に服することができるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」

<麻痺の範囲・程度>
・一下肢の軽度の単麻痺

<参考例>
第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度の遅いとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの
616万円  
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの

「通常の労務に服することができるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの」

<麻痺の範囲・程度>
・運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの
・運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺

<参考例>
軽微な筋緊張の亢進が認められるもの。運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢にわたって認められるもの
224万円  

脊髄損傷の後遺障害のポイント


脊髄とは脊椎(背骨)の中にある中枢神経であり、脳から送られる神経の信号を末梢神経に伝え、また抹消神経からの信号を脳に伝える重要な役割をしています。
脊髄損傷というのは、脊髄が損傷することですが、脊髄は、脳と同じく中枢神経ですから、一度傷つくと二度と再生しません。
脊髄損傷による障害(麻痺)は、治らない、ということです。麻痺に伴い、尿路障害などの腹部臓器の障害が認められます。

  1. 脊髄損傷の種類

    脊髄損傷は、損傷の程度により、「完全麻痺」と「不完全麻痺」に分かれます。
    ①完全麻痺・・・・上肢又は下肢が完全強直又は完全に弛緩する
    ②不完全麻痺・・・上肢又は下肢を運動させることができても可動範囲等に問題がある場合

  2. 麻痺の種類

    麻痺の種類は以下の4つに分かれます。
    ①四肢麻痺・・・両側上肢の麻痺
    ②片麻痺・・・・一側上下肢の麻痺
    ③対麻痺・・・・両上肢または両下肢の麻痺
    ④単麻痺・・・・上肢または下肢の一肢のみの麻痺

    損傷脊髄高位により異なり、中下位頸髄損傷では四肢麻痺、胸腰髄損傷では対麻痺、上位頸髄損傷では四肢麻痺に呼吸麻痺を伴います。
    第2腰椎以下の脊柱内の馬尾神経が損傷された場合においても、脊髄の損傷による障害である下肢の運動麻痺(運動障害)、感覚麻痺(感覚障害)、尿路機能障害又は腸管機能障害(神経因性膀胱障害又は神経因性直腸障害)等を生じることから、脊髄損傷に含めます。

  3. 麻痺の程度

    麻痺の程度については、高度、中等度、軽度の3つに分けられます。

    ①高度の麻痺
    高度の麻痺とは、障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作(上肢においては物を持ち上げて移動させること、下肢においては歩行や立位をとること)ができない程度の麻痺をいいます。

    <参考例>
    ・完全強直またはこれに近い状態にあるもの。
    ・上肢においては、三大関節および5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの。
    ・下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの。
    ・上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの。
    ・下肢においては、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性および随意的な運動性をほとんど失ったもの。

    ②中程度の麻痺
    中程度の麻痺とは、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるものをいいます。

    <参考例>
    ・上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500グラム)を持ち上げることができないもの又は障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの。
    ・下肢においては、障害を残した一下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの。

    ③軽度の麻痺
    軽度の麻痺とは、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性および速度が相当程度失われているものをいいます。

    <参考例>
    ・上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの。
    ・下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの。