自賠責保険とは、自動車・原動機付自転車の所有者と運転者が、必ず加入しなければならない保険で、強制保険と呼ばれています。これに対し、各人が任意で入る保険を任意保険といいます。
自賠責保険には以下の特徴があります。
- 全員加入しなければならず、加入しない場合には罰則あり。
- 人身事故のみ適用され、物損事故では保険支払われず。
- 支払われる損害賠償額(被害者請求の場合)ないし保険金(加害者請求の場合)の額が定額化されている。
- 示談代行サービスはない。
自賠法3条について
通常の不法行為では、被害者の方が
(1)加害者の故意あるいは過失、
(2)加害者の行為が違法であること、
(3)事故と損害との因果関係、
(4)損害額について
を立証しなければなりません。
しかし、自賠法は、被害者救済のため、立証責任を被害者から加害者に転換し、
1. 自己のために自動車を運行の用に供する者が、
2. その運行によって他人の生命または身体を害したとき、
という2つの要件さえ満たせば、損害賠償責任を負担するとしています。
これは事実上の無過失責任ともいえるもので、加害者側は、責任を免れるためには、以下の3要件を立証しなければなりません。
- 運行供用者と運転者が無過失であったこと。
- 被害者または第三者の故意または過失があったこと。
- 自動車に構造上の欠陥又は障害がなかったこと。
これらはすべて立証しないと加害者は損害賠償責任を免れないのです。
したがって、弁護士は、自動車事故の場合には、立証しやすいように、まず自賠法3条を主張するのが主流となっています。
時効
民法709条の通常の不法行為の消滅時効は、被害者が不法行為があったことを知ったときから3年間、あるいは不法行為の時から20年間のいずれか早い方です。
しかし、自賠責保険に対する請求については、事故の時から2年間とされており、通常の不法行為より短い時効期間が定められておりますので、注意が必要です。後遺症が残ったときは、症状固定の時からそれぞれ起算します。
時効を中断するには、通常訴訟、仮差押等をしますが、自賠責保険の請求権の時効を中断させるには、自賠責保険会社に対して「時効中断申請書」を提出し、その承認をもらえばまた2年間時効がのびることになります。そして、この承認はほとんどの場合にもらえますので、自賠責保険の請求の時効を中断させるには、この方法を使うと便利です。
自賠責保険算定基準
平成14年4月1日以降に発生した事故について適用されます。その前に発生した事故については、旧基準が適用になります。
■ その他定額払い基準
1. 入院中の看護料
(原則として12歳以下の子供に近親者が付き添った例) |
1日 4,100円 |
2. 自宅介護、通院看護、近親者 |
1日 2,050円 |
3. 入院諸雑費 |
1日 1,100円 |
4. 休業損害
(但し、それ以上の証拠資料があるときは別途) |
1日 5,700円 |
5. 傷害慰謝料 |
1日 4,200円 |
6. 後遺障害慰謝料 |
別表参照 |
7. 死亡慰謝料 |
本人(相続される) |
350万円 |
遺族 1人 |
550万円 |
遺族 2人 |
650万円 |
遺族 3人以上 |
750万円 |
8. 葬儀費用 |
原則60万円(100万円以下) |
自賠責保険の重過失減額
自賠責保険は、被害者救済のための保険であり、被害者の過失が7割未満の場合には、損害賠償額ないし保険金額の減額はありません。しかし、それ以上の場合は、以下のようになります。
■ 後遺障害・死亡事案
被害者の過失が |
7割以上8割未満 |
2割減額 |
8割以上9割未満 |
3割減額 |
9割以上10割未満 |
5割減額 |
■ 傷害事案
自賠責保険と労災保険
交通事故のうち、業務災害または通勤災害により怪我をしたときは、自賠責保険の他、勤務先が加入している労災保険の療養の給付及び休業補償給付並びに傷病補償年金(休業が1年6ヶ月を超えて続き、傷病の状態が重いとき)を受けられる可能性があります。
どちらからでも給付を受けることができます。それぞれ適用対象が異なる部分があるので、各事案において、より厚く給付が受けられるよう請求することになります。